シミジミと元気だ…
2006年 03月 21日
なー、と志水辰夫を読みながら思っていた。志水辰夫は最近では
短編が多く、その評価も高い。しかし、ぼくは彼の長編が好きだ。ファンである。
書評家などが志水節と呼ぶ、独自の情景…心象表現、シリアスなときにも
漂うユーモア感覚と短いセンテンスを多用したキレのいい文章が良い。
とはいえ登場する男は、きっぱりとした女にくらべ大体グズグズとしている。
大概、「なんて俺は情けないんだろ」なんて悩み悩み行動する輩なのである。
その志水久々の長編「ラストドリーム」を読んだ。基本的に彼の小説に登場する
女性は凛々しく魅力的だ。この小説もそうだ。その女性(亡き妻)への
想いだけに貫かれている。「行きずりの街」や「背いて故郷」などと同じだ。
で、いつも男はその想いを胸に妙にシミジミとしながらも元気に行動するのだ。
そして、この小説(主人公はぼくより年上だけど)を読みながら思ったね、
若い人が、これを読んだとしてもなんだかこの感じってわかなんないかもね、って。
こんなことをそれこそシミジミと実感できるってのもなんだかな、ではある。
小説家は人生を折り返したと実感した時、青春小説を書きたくなるようなのだ。
うん、小説家ではなくたって心境としてとてもよく分る。だって、若い頃の
精神構造を残したままの今の自分に対する一種の確認作業なのだから。
志水辰夫のこの小説もカタチを変えた青春小説なのかもしれないな。
by koz-mic
| 2006-03-21 03:13
| 今日のiショットノート